2025.09.05
私たちの生活の中で、BGM(バックグラウンドミュージック)は身近な存在です。カフェやスーパー、病院の待合室など、意識していなくても常にどこかで音楽が流れています。実はこの「BGM」には、心の状態を整えたり、作業への集中を助けたりする力があることが研究でも分かってきています。
音楽は脳の働きに直接影響を与えます。穏やかな曲は自律神経を落ち着かせ、不安感をやわらげる効果があります。逆に、明るくテンポの良い曲は気分を前向きにしたり、やる気を引き出したりします。これは、うつ病や不安障害などの精神疾患を抱える方にとっても大きな助けとなり得ます。
みなさんが毎日を過ごす中で、「不安でそわそわする」「気持ちが重くて動き出しにくい」「集中が続かない」――そんな場面は誰にでもあります。ここでは、事業所での時間やお家での過ごし方に**BGM(バックグラウンドミュージック)**を少し取り入れて、心と体を整えるお手伝いができればと思い、お話します。大切なのは“正解の音楽”を見つけることではなく、あなたに合う音の使い方を一緒に探すことです。
まずは呼吸が整いやすい音から試してみましょう。静かなピアノ、弦楽器のやわらかい曲、雨音や川のせせらぎなどの自然音がおすすめです。音量は小さめにして、会話が聞こえる程度から始めると安心です。
もしドキドキが強いときは、10分だけと時間を区切って流してみてください。途中で「合わないな」と感じたら、すぐ止めて大丈夫。無理は不要です。
一歩目を助けるには、明るめでテンポが穏やかな曲が向いています。ポップスでもジャズでもボサノバでも、歌詞が気になる方はインストゥルメンタル(歌のない曲)を。
「3分の1曲だけ流したら、まず机を整える」「1曲終わるまでメールを1通送る」など、小さな行動の合図にしてみましょう。達成できたら音楽を止めて休むのも立派なセルフケアです。
注意が散りやすい時には、一定のリズムで主張の少ない音が作業の“背景”として役立ちます。環境音、Lo-fi系のインスト、ゲームBGMのような単調で落ち着いた音も良いことがあります。イヤホンが負担な方は、片耳だけや耳をふさがないタイプも選べます。静けさが好きな日は、音を流さない選択ももちろんOKです。
最初は短時間から:5~10分でお試し → 合えば少しずつ延長。
音量は小さく:人の声が聞き取れるくらい。疲れたらすぐ下げましょう。
“避けたい曲”リストも用意:つらい記憶に結びつく曲や、体調によって負担な音は無理に聴かない。
その日の体調で変えてOK:昨日合った音が今日は合わない、は普通のことです。
区切りの合図に使う:「この曲が終わったら休憩」「2曲で作業終了」など、時間管理にも。
私たち職員は、みなさんが安心して試せる環境を一緒につくります
「この曲は落ち着く」「この音は苦手」など、感じたことを遠慮なく教えてください。プレイリストの見直しや席の配置、休憩タイミングの調整など、環境づくりを一緒に進めます。
音楽は道具のひとつです。合わない時は静けさを選ぶ、別の方法(深呼吸、ストレッチ、席替え、短い散歩)に切り替える――その選び直しができること自体がセルフケアです。もし音に過敏さが出たり、強い不快感やフラッシュバックが起きる場合は、すぐに止めて職員にお声がけください。必要に応じて主治医や支援機関と連携しながら、無理なく続けられる形を考えます。
B型事業所でも、作業の種類や利用者さんの体調に合わせてBGMを工夫することで、より快適な環境をつくることができます。
午前中はリズム感のある明るい曲でスタートダッシュを助ける
午後は疲れを考慮し、落ち着いたBGMでリラックスできる雰囲気にする
個別作業中はイヤホンで好みのBGMを聴けるよう配慮する
ご希望に応じて、こうした小さな工夫をすることもできますのでいつでもおきがる
ただし、音楽の感じ方は人それぞれです。ある人にとっては心地よいBGMでも、別の人には雑音に聞こえることがあります。そのため、BGMの選曲や音量には配慮し、利用者さんの意見を取り入れながら環境を整えることが大切です。
BGMは単なる「作業中の音」ではなく、心と体に作用する大切な要素です。精神疾患をお持ちの方にとっても、うまく取り入れることで不安を和らげ、作業や生活の質を高める手助けになります。私たちの事業所でも、利用者さん一人ひとりが安心して過ごせるよう、音楽の力を取り入れた環境づくりを心がけていきたいと思います。